FAMOUS JAZZ CD 21 PROJECT | 21世紀の定番ジャズCD

1980年代のジャズ 100CD 選考座談会 vol.05

この20年で淘汰されたもの その1

村井:
そこでECMの話になるんですけど、そういう意味では時代の流れに対して、極端に棹差して売れ線で当時の話題作を作ろうという意識はなかったんだろうな。それが逆に今でも光るってことが出てくるんでしょうね。70年代っていうのは、後半にフュージョン・ブームが4-5年あったわけでしょ。それがある種の終息を迎えたのが80年代なわけです。
80年代はギタリストが多いって話もフュージョン・ブームと関連が深いわけだし、他の音楽との関わりっていうのは当然フュージョンもそうだったわけだけど、フュージョンは商業性っていうか、いわゆる売れ線狙いみたいなのがありすぎたので、80年代になってからのフュージョンは今の耳で聴くとちょっと辛いよね、という気がするんですよね。
それが淘汰されて残って、表層的なことじゃないロックやワールド・ミュージックとの関わりとか、あるいはギターという楽器をいわゆるフュージョン・ギターとは違うところで新しくジャズの分野で使おうとしたミュージシャンが出てきたのが、80年代なのではないかなという気がします。みんなでこうやってアルバムを選んでみて、そういうことがすごく具体的にわかるのは、おもしろいなと思いました。
後藤:
確かにそうですね。事前に想像していた80年代というのとちょっと違っていますよね。けれども村井さんが言ったように、これがまっとうな姿なんだろうな。80年代のメディア戦略とか時代の流行といった上積みを取り去ってちゃんと沈殿したっていうか、内容のいいものがここに残った妥当な結果なんじゃないかなと思うんです。だから当時とのずれがおもしろいかもね。
原田:
僕にとって、チック・コリアは80年代に華やかだった印象があります。リターン・トゥ・フォー・エヴァー再結成、ゲイリー・バートンとのデュオ、ミロスラフ・ヴィトウスとロイ・ヘインズのトリオ、全部焼きなおしですけど『スイング・ジャーナル』にすごくたくさん載っていた。エレクトリック・バンド、アコースティック・バンド両方やったり。でも、今わざわざ勧めたい80年代のチック・コリアってなんだろうっていわれると僕はわからないですね。このリストにも入ってないですよね。

Trio Music / Chick Corea, Miroslav Vitous, Roy Haynes

村井:
『スリー・クァルテッツ』が1枚あるだけ。でも、他がないんですよね、ほとんど。1枚しかないけど3票なのね。80年代のチック・コリアに何かを見る人は、これしかないと思っているんだよね。

Three Quartets / Chick Corea

須藤:
でもこれ、的を射ていると思いますよ。ここで終わったかなという雰囲気。
後藤:
そうね、『スリー・クァルテッツ』って81年だっけ? それ以降のチックはもうちょっと…ってありますよね。悪くはないんだけど、そんなにおもしろくもない。
原田:
リアル・タイムでも『スリー・クァルテッツ』って評価されていたんですか?
村井:
一応話題にはなったと記憶しています。大きくアルバム・レビューも出ていたと思う。特にアマチュア・バンドとかをやっている人には、ブレッカーとチックの壮絶なインプロヴィゼーションが人気があった。
須藤:
これもステップスと同じだったんですかね? 扱い的には。
後藤:
いや、僕の印象ではね、「ステップス」の動きは雑誌で大きく取り上げられていたけれど『スリー・クァルテッツ』はどうかなあ。まあ、ジャズ喫茶では人気が高かったけど、一般的にはもう少し地味な評価だった。個人的には「ステップス」よりは『スリー・クァルテッツ』のほうがブレッカーいい演奏をしていると思うんですよね。でも当時は「ステップス」のほうが騒がれていましたね。
村井:
まぁ、日本制作のものだしね、ステップスは。

Smokin' in the Pit / Steps

後藤:
あと、先ほどの八田さんのご意見ですよね、当時騒がれたけど現在の評価はどうなのかって人たち。スタンリー・ジョーダンとかジョージ・ウィンストンとか、その辺の話は原田さんどうですか?
原田:
僕の田舎では「スイング・ジャーナル」が唯一売ってるジャズ雑誌なんです。で、見ると今月はジョージ・ウィンストンの記事がある。キース・ジャレットの再来とか、ウィンダム・ヒルは現代のECMだ、みたいなことが書いてあるわけです。それを真に受けるわけですよ。
村井:
「現代のECM」って、すごいよね。
益子:
その時点でもう過去のもの扱いか! みたいなね。
後藤:
だって、「いーぐる」ですらウィンダム・ヒルのアルバム何枚も買いましたよ。結構かけていた。やっぱりこれは恥ずかし体験だよね。
須藤:
あのときあった話は70年代ECM、80年代ウィンダム・ヒル、90年代プライベート・ミュージックだったんですよ。それは確かにムーヴメントあったんですよ。
一同:
うーん。
村井:
いや、当時『ジャズライフ』もウィンダム・ヒル一色みたいな感じだったの、かなり。
後藤:
乗せられて買いましたよ。
村井:
それで、すごい絶賛しているわけ、内藤遊人さんとか。もう個人名出しまくり!
でもさ、たぶん、いーぐるで僕、聴いたんだと思うけど「ナンダ!コリャ?!」とか思っちゃったわけ(笑)。
後藤:
あなたは耳いいねぇー。僕はね、2ヶ月ぐらい騙されたわけよ(爆笑)。3ヶ月目にね、化けの皮はがれたけどね、それで全部売っちゃったけど。
村井:
だからあれがね、当時『ジャズライフ』や『スイング・ジャーナル』でトップ記事みたいになっていたんだから、いやぁ、怖いものですねっていう話なんだけど。
須藤:
今から思うと取り扱うべきものじゃないでしょう。
村井:
やっぱりちょっと違うよね。
後藤:
いや、でもね。それは後知恵よ。あのときはわかんないよ。ぱっと聴けばいいなと思うんですよ、特に疲れているときなんか。やっぱりジャズ喫茶なんかでかけると受けるのよ。ところが何回か聴いているうちに、なんかヘンだぞってなるわけ。これが怖いよね。

※ この原稿は2008年7月5日に都内某所で行われた座談会の模様を再構成したものです。