益子博之単独選出からは何を選ぶ?
- 村井:
- じゃ、次、益子さんの分にいきましょう。
- 益子:
- まずは『ミニアチュア』。80年代のティム・バーンはこれでいいんじゃないかと。
- 村井:
- なるほど。これ僕もよく覚えているアルバムですね。
- 須藤:
- ティム・バーンは1枚あれば、私はいいです。
- 後藤:
- 入れようよ。
- 益子:
- 90年代以降に顕在化する方向性が結構入っていて、意外に音響派っぽかったりするんです。
- 村井:
- 『フルトン・ストリート・モール』が候補で入っていたと思うんですけど、僕は『ミニアチュール』のほうがいいと思う。
- 益子:
- あっちはビル・フリゼールとのデュオですね。
- 村井:
- じゃ、『ミニアチュール』入れますね。
- 益子:
- ウェザー・リポート『プロセッション』。私はこれを是非入れておきたいです。
- 村井:
- ウェザー、なんとこれしか選んでないんだよね。
- 益子:
- さっき、70年代と比べて云々、ってありましたけど、ヴィクター・ベイリー、オマー・ハキムが入ってからって70年代のものとは方向性が全然違うんですよ。ウェザーにしては珍しくアメリカのソウル系のノリが強くて、ヴォーカル・トラックも入っていたりしますし、その一方で今のザヴィヌル・シンジケイトにつながる流れの端緒でもあると僕は思っているんです。
- 村井:
- 『プロセッション』はちょっと地味っぽいんだけどいい曲多いんですよね。「プラザ・リアル」も入っていますしね。「プロセッション」という曲もなかなかいいんですね。
- 後藤:
- じゃあ、入れたら?
- 村井:
- うん、ウェザー・リポートを敢えて1枚これにして、ベースがジャコじゃないってとこがおもしろいって気がしますが。
- 益子:
- ありがとうございます。それで次に問題の清水靖晃絡みのものを僕は何枚か入れたんですけど、話題になればいいというか、どれか1枚でいいという感じなんですけど。
- 須藤:
- カズミ・バンド含み?
- 益子:
- カズミ・バンドの話をしておくと、今まで出てきた日本人って、大体リーダー以外が全員外人なんですよね。
- 村井:
- そういえばそうだなあ。
- 益子:
- なので敢えて全員日本人っていうのがあってもいいのではないかということと、プログレの影響が濃かったり、かなり特殊な音楽をやっているので、これ80年代ならではだと思うんですよ。で、どれを入れたいかというのは、かなり微妙で…
- 村井:
- いやぁ、でも確かに4枚入れるわけにはいかないから。
- 益子:
- もちろん1枚でいいと思うんですけど、どれにしようかな、と。
- 須藤:
- この中でよく聴いたのは『ガネシア』だけどなあ。
- 益子:
- だって須藤さん、マライア聴いてないでしょ?
- 須藤:
- うーん、持っているし、聴いたこともあるにはあるけど。
- 村井:
- 『ガネシア』ね。うーん、うーん、うーん。
- 須藤:
- それじゃ、あまりにもだよなーって、気もするでもなし。
- 村井:
- 僕がここでもし1枚入れるなら、『北京の秋』がいいと思うんですけど。
- 原田:
- 『北京の秋』かぁ。
- 益子:
- ここの議論につながるかどうかはまた別問題なんですけど、ある種の「ポストモダン・ジャズ」の文脈で考えると、とてもいい出来なんですよね。
- 村井:
- そうそう。だから『北京の秋』を残して。カズミ・バンドの『ガネシア』も必ずしも悪くはないんだけど、ちょっと僕の好みとしてはあんまりかなぁ。
- 後藤:
- だって、香津美は『MOBO』で入っているでしょ? 2枚は多いんじゃない?
- 益子:
- 山木秀夫のドラムスを残しておきたいという気持ちがちょっとあるんですよね。『北京の秋』ではまともに叩いていないので。
- 村井:
- どうでしょうね。わかんないなぁ。『北京の秋』がいいんじゃないかな?
- 益子:
- と言いつつ、個人的にコンポストの読者に聴いて欲しいのは実は『うたかたの日々』なんですよね。
- 須藤:
- それは聴いてないなぁ。
- 後藤:
- オレも聴いてないからわからない。
- 村井:
- もうこうなったら、1枚好きなの選んでよ。エヘヘヘ。
- 益子:
- はい、『うたかたの日々』にさせてもらいます。次はミロスラフ・ヴィトウス・グループ。誰も知らないかもしれませんが。
- 須藤:
- 聴き直しました。
- 村井:
- これってどんなジャケットですか?
- 益子:
- 持ってきました。
- 後藤:
- 知らない。
- 益子:
- これはですね、さっきのモルデ・コンサートと同じように面子がちょっと変わっているんです。ジョン・サーマン、ケニー・カークランドにヨン・クリステンセン。
- 後藤:
- ヘンな組み合わせだなぁ。
- 須藤:
- 当時、3枚出しているんですよね。
- 益子:
- うん、3枚の中で僕はこれが1番いいと思うんですが。
- 須藤:
- 僕はそれが1番まとまっていないと思うんですけど。
- 益子:
- そのまとまりなさ感がいいの。
- 村井:
- 須藤さんはこれについて知っているけど、あんまりお薦めでもないと。
- 須藤:
- いい印象がないです。楽曲がバラバラという雰囲気があって。なんかギクシャクしている感じがするんです。
- 村井:
- わかんない、オレ、ごめん。アナログ、今聴けないし。
- 後藤:
- オレはわかんない。聴いてないし。
- 須藤:
- 私も乗れないなぁ。
- 村井:
- あ、そう。じゃ、とりあえず、すみません、ってことで。
- 益子:
- はい。最後は、キング・クリムゾン『ディシプリン』。
- 村井:
- さー、これを入れるかどうかだ!
- 須藤:
- カッコイイアルバムなんですけどね。
- 益子:
- この当時のいわゆるワールド・ミュージック的な部分とか、ミニマル・ミュージック的なところだとか、当時最新のテクノロジー、例えばシンセ・ドラムを全面導入していたりだとか。さっきデヴィッド・トーンの話をしましたが、少なからずジャズ方面にも影響があったと思うんです。
- 村井:
- それは凄くあったと思いますよ。ジャンル的には反則スレスレっていうか、反則かもしれないけど、でも、僕は入れていいと思う。
- 須藤:
- 入れていいと思う。
- 後藤:
- じゃ、入れていいんじゃない?
- 益子:
- まぁ、もっと反則なのは他にもありますからね。はい、じゃ、入れるということで。
※ この原稿は2008年7月5日に都内某所で行われた座談会の模様を再構成したものです。


